大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和31年(ラ)615号 決定 1956年9月19日

抗告人 那須自動車工業株式会社 外一名

主文

本件抗告を却下する。

理由

抗告人らは、原決定を取り消し相当の裁判を求める旨申立て、その理由として「昭和三十年九月十二日伊藤直吉所有の本件自動車は東京都板橋区板橋町十丁目停留所附近において横転し使用に堪えざる迄に破壊されたので、右伊藤直吉は那須自動車工業株式会社に右自動車の修理を依頼しその代金は修理完了のとき右自動車と引き換えに支払うことを約定した。右会社はすでに修理を完了し右伊藤直吉に対し自動車修理代金の支払い並びに右自動車の引取り方を求めたが、同人はこれに応ぜず、右会社は右自動車につき留置権を有するものである。よつて、抗告人那須自動車工業株式会社は自動車の引渡命令を受ける理由なく、また、抗告人有限会社那須自工は右那須自動車工業株式会社から保管を依頼されて現在右自動車を保管しているもので、自動車の引渡命令を受ける理由のないものであるので、原決定の取り消しを求めるため本件抗告に及んだ」と述べた。

よつて案ずるに、競売法による競売に関しては、競売法に別段の定めのないときは、その性質の許す限り民事訴訟法の規定を準用すべきであつて、競売法、自動車及び建設機械競売規則による自動車の競売に関してなされる第三者に対する自動車の引渡命令は、執行裁判所が強制執行の方法としてなす決定に準じて考えるべきところ、本件記録によれば、原裁判所は本件引渡命令を発するにつき抗告人らに何ら陳述の機会を与えていないことが明らかであるので、かような場合には右引渡命令に不服のあるものは、民事訴訟法第五百四十四条に則り異議の申立をなしその決定に対し同法第五百五十八条に則り即時抗告の申立をなすべきにして、右引渡命令に対し直接即時抗告をなすことを許されないものと解すべきである。よつて本件抗告は不適法にして却下のほかないので、本件抗告を却下し主文のとおり決定する。

(裁判官 岡咲恕一 亀山脩平 脇屋寿夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例